【その2:秋の対話(フゲッタ)】欲張りキルンベルガー2(KB2)のクラヴィコードで弾いてみたシリーズ [「準」純正律(12鍵盤を純正律に近づける研究)]
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欲張りキルンベルガー2(KB2)のクラヴィコードで弾いてみたシリーズ(その1:バッハ前奏曲) [「準」純正律(12鍵盤を純正律に近づける研究)]
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「準」純正律の具体例その1~「欲張りKB2」チェンバロでFlとアンサンブル~ [「準」純正律(12鍵盤を純正律に近づける研究)]
本日、チェンバロ発表会の出演曲の希望を出し(バッハのパルティータ第6番のトッカータ)、無事受理されましたので、今後の練習に際し、色々な調律法で検証できたら良いなと思う今時分です。
では今回は昨日の続きと言うことで、、、ええと何でしたっけ?(汗)、あ、そうそう、
>とりあえず叩き台(?)として、後期バロックの特性を考慮した、いわば「比較的大人しい」音律を考えてみました。
この調律法はもしかしたら旧ブログで書いたかも知れませんが、この比率入り5度圏図は昨日作ったものです。
図を見てお分かりのように、キルンベルガーⅡ(以下は「KB2」)で特徴的な「1/2シントニックコンマ(約11セント)狭い5度」を、KB2の定位置であるD-A-E間のみならず、F#-C#-G#間にも配置した、ということです。いわば「欲張りKB2」という訳です(笑)。この配置により、イ長調とホ長調のⅠの和音の長三度が純正になります。
図中の「C音に対する比率」に関し、黒数字は従来の典型的な純正律の比率、青数字はKB2の比率、赤数字は前者のいずれにも該当しない、いわばこの音律特有の比率です。
で、昨日、実際に色々な曲を弾いてみたのですが、、、、いやぁこれが結っっっっっ構良いんですよ(笑)、、KB3やバロッティなどの一般的な不均等音律でイ長調曲などを弾いたときには「うーん、何か物足りない」感、「何かちょっとズレている」感があるのですが、この調律法で弾くと、それが一挙に払拭されるように感じました。
11セント狭い5度に関しては、(おそらく古楽関係者の多く(殆どの人?)は、この狭い5度に対して最初の内は「これはちょっと受け入れられない!」旨の拒絶反応を示すと思いますが、)実際のところ、「慣れれば気にならなくなる」というのが率直な所感です。「何事も慣れ」だと思います(&現代の鍵盤楽器奏者は、「純正律経験」が圧倒的に不足していると思われます)。
今回はモダンピッチ且つFlとのアンサンブルではありますが、この音律の響きを録音してみましたので、音源upします(子供の騒ぐ声等が入ってますが悪しからず(汗))。
最初はハ長調曲で、バッハ=グノーのアヴェ・マリアです。
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次はト長調曲で、バッハのイギリス組曲第3番のガボット2
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最後はイ長調&イ短調曲で、クリスティアン・バッハのパストラーレです、、、、が、余りにミスが多いので途中までということで(汗)
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とまあこんな感じです。前にKB「3」に調律して合わせた時よりも、ずっと楽器が鳴っていたし、弾いていて圧倒的に気持ちが良かったです。
では今回はこんなところで。
12鍵盤楽器における「準」純正律の研究~序論~ [「準」純正律(12鍵盤を純正律に近づける研究)]
と言う訳で、春のチェンバロ発表会の出演希望を出したこともあり、本日から、鍵盤楽器の「準」純正律の研究を開始したいと思います。
序論編:
【起】部(問題提起)
現在一般に使われている鍵盤楽器用の古典調律は、その多くが「全ての調を問題無く演奏できるようにするため」のものです。
具体的には、古楽発表会で主流の「バロッティ」や「ヤング」、生楽器のみならずDTMの分野でも人気が高い「キルンベルガー3」、モダンピアノでは可成り前から使われている「ヴェルクマイスター(第1技法第3)」、バッハのWTC用の音律として知られる数々の音律(有名どころでは、ケルナー、レーマン(リーマン)、ジョバン(ジョビン)など)、これらは皆「24調全てを演奏するための音律」とされています。
一方、古典派前半くらいまでの鍵盤曲の作品は、概ね、
長調は♭3つ(変ホ長調)から♯4つ(ホ長調)まで、
短調は♭4つ(ヘ短調)から♯3つ(嬰ヘ短調)まで
であり、
時代や作曲者、作品(組曲の構成)等によっては更に狭く、
長調は♭2つ(変ロ長調)から♯3つ(イ長調)くらいまで、
短調は♭3つ(ハ短調)から♯1つ(ホ短調)くらいまで考慮すれば十分であり、さらにもっと狭い範囲でも十分なことさえあります。
このような場合に、従来は、専ら「1/4シントニックコンマの中全音律(ミーントーン)」を出発点として、使用する調律法が考えられていた訳です。
その根底にはやはり、「純正律は12鍵盤の楽器では使用不可能である!」という謂わば「負の」発想法があったからだと思われます。
しかしながら、古楽を真面目に勉強する人であれば、ここで今一度、従来の「発想法」を考え直す(=疑問を持つ)必要があるのではないか、と思うのです。
すなわち、「本当に12鍵盤楽器では純正律は使用不可能なのであろうか?」と。
さらに、このように考える余地があるのではないでしょうか。
歴史に名を残した大作曲家の内、鍵盤楽器作品「だけ」しか作らなかった人は、殆ど皆無なのではないだろうか? 大作曲家は皆、歌曲、フレットレス弦楽器(オケ含む)、管楽器(など)の曲を作ったのではないだろうか? 歌曲やフレットレス弦楽器や管楽器(など)にとっての「理想の音律(音程)」は何であろうか? そして、その音律(音程)の「理想」は、鍵盤曲を作る上でも少なからず反映されているのではないだろうか? と。
【承】部
西洋音楽史において、12鍵盤の鍵盤楽器に対して「純正律」の使用を推奨した人として(現在)最も有名な人が、J.P.キルンベルガー(1721年~1783年、ドイツ)でしょう。
旧ブログで記事にしたように、
http://meantone.blog.so-net.ne.jp/2011-02-06
キルンベルガーは、1766年(45歳で大バッハの死後16年後)に、『クラヴィーアの練習[Clavierubung]』の「第4部」で、白鍵が完全な純正律(Just Intonation)で黒鍵が(ほぼ)ピタゴラス律の「キルンベルガー第Ⅰ」を発表し、
次いで1771年に、有名な『純正作曲の技法[Die Kunst des reinen Satzes in der Musik]』の「第1部」で、白鍵が「ほぼ」純正律(Aだけが逸脱)、黒鍵は(ほぼ)ピタゴラス律の「キルンベルガー第Ⅱ」を発表しています。(ちなみに、その後のフォルケルへの手紙で(いわば「しぶしぶ」?)提案した「キルンベルガーⅢ(現在最も有名な調律法)」は、白鍵がほぼミーントーンであり、白鍵の純正律(比率主義)的な側面が大幅に後退しています。)
【転】部
ただし、この頃は大バッハの没後ですので、鍵盤楽器界では(いわば最先端の調律法として)「全ての調(24調)で演奏できる音律」が求められており、キルンベルガーの提案した音律も、そのような時代の要請を踏まえたものであると考えられます。
これはどういうことかと言うと、最初に書いた「古典派前半くらいまでの比較的狭い調の範囲での鍵盤曲の作品」を弾くためには、キルンベルガー音律の「黒鍵」の配置(音程)では、『均質化され過ぎている』ことを意味します。つまり、「比較的狭い調の範囲での鍵盤曲の作品」をより良く、より美しく演奏するためには、黒鍵の配置(音程)を『もっと欲張る必要がある』ということです。
【結】部
それでは一体、具体的にどのように欲張れば良いのでしょうか? これが次なる問題です。
これは、色々なバリエーションが(それこそ無数に?)考えられるところですが、とりあえず叩き台(?)として、後期バロックの特性(ないし現在知られている当時の先進的調律法)を考慮した、謂わば「比較的大人しい」音律を考えてみました。これです。じゃーん!
(続く!(爆))