SSブログ

ソルの「純正律攻略」に関する研究その2:作品31のD-durとC-dur曲 [フェルナンド・ソルの研究]

 いやぁ、本当、(渡辺三冠&NHK杯を負かした)今日の広瀬七段の将棋(特に終盤の大駒を切ってからの手順)は惚れ惚れするほど見事だった!、、、って、ここじゃないや、、叫ぶ場所を間違えてますわね(爆)。

 何でこんな前置き書いたかというと、(実際今日のNHKの将棋放送で思わず感動してしまったからなのですが(笑))、今日練習&録音したソルの「ニ長調」曲も、それに匹敵するくらい見事な書法で作られているとしみじみ感じたからな訳ですよ。

 それと、現在の(コンピュータ将棋の隆盛に脅かされつつも)非常に盛り上がっている将棋界と、現在の(12ETの「不健康さ」があたかも正確に投影されている?かのように、腱鞘炎や高級楽器が売れない不況等にあえいでいる)クラシックギター界とを対比してみたかった意味もあります(ぶっちゃけ、「もう少し頑張ってくださいよクラシックギター界&盛り上がれない理由なんてただ一つ、「フレットの位置が悪いから」に決まってるでしょ!?とエール付きプレッシャーをかけているんですけどねw)。

 そんな訳で、今日も逝ってもとい、行ってみましょう、、、題して、
ノーマル純正律ギター(DA破綻タイプ)で弾けてしまうフェルナンド・ソルの「ニ長調(D-dur)」曲のコーナー、その2!! (やんややんや)。

 今回も弾き易そうな曲を選んでみたところ、この曲になりました。作品31の練習曲集の内の第3番です。


 少し詳し目に書くと、ソルの練習曲(ギターエチュード)集は、
 作品6(全12曲、1815~17年頃、ソル37~39歳)
 作品29(全12曲、1827年、ソル49歳)
 作品31(全24曲、1828年、ソル50歳)
 作品35(全24曲、1828年、ソル50歳)
 作品60(全25曲、1836~37年頃、ソル58~59歳)
の5つが知られていて、初期の作品6及び29は長大で難しい曲が多いのですが、当時の音楽社会(愛好家)の要請は「もっとやさしい曲を!」だったようで、それに応えて(言い換えると「それに妥協してor負けて」?)、後期の作品になるほど曲構成が平易かつ短くなって行きます(最後の作品60は「初心者の指導用」的な位置づけになっています)。

 こういった当時のギター音楽界の状況については、ソルの残した注記や文章を読むと(当時の周囲の意識の低さに対するソルの「嘆き」、「イライラ」的な感情も伝わって来て)、色々と興味深いものがあります。

 そんな訳で、今回練習した「作品31」のエチュードは、難易度や1曲あたりの規模などの点では「中庸(ほどほど)」であると思われるのですが、私的にはソルのエチュード集の中ではこの作品31が最も親しみ易くて好きですね。何と言うか、「流麗さ」を感じるというか、弾いていて凄く幸せになれるし、敢えて自己?分析すると、ソルの他のエチュード集に比べて「より自然な感じ」、「よりエチュードっぽくない感じ」がすること、つまり、音形やメロディーの流れなどの点で何か「メカニック臭さ」が最も希薄な感じがするんですよ、そこが凄く好きな要因なのかなと思ったりもします。

 一方で、今回、純正律ギターを使って弾いてみると、消音や強弱法などで以前は全く意識していなかった「技術的な課題」が用意されている(幾つもの「仕掛け(トラップ)」が仕込まれている)ことに気付くことになり、このところ「驚き&新たな発見と感動の連続」という感じです。いやぁ「芸術音楽」ってこんなにも深淵なんですねぇ、、ようやっと「その第一歩」を踏み出せたのではないかと、そんな感じさえする今日この頃です。

 で、前置きが長くなりましたが、いよいよ音源UPっって、アレですか、例によって「お父さん遊ぼうよ」ですか(汗)、、、分かった、15分待ってくれ三男よ(←本当、これリアルタイム実話ですのでw)

 というわけで15分で書ける所まで書きます(爆)

 とりあえず音源UPですね。


  ↑
今回の調弦です。(現在のフレッティングですと、3弦2フレットのA音は、他の(高低)A音よりも数セント高くなるように設定してます。ただ、「オクターブ関係に違和感を感じない」程度の修正(←というか誤魔化しw)ですので、それをも確認していただければと)

で、今日のソルの「ニ長調曲」は、作品31の第3番です。



で、解説すると、、、ってもう15分経った?(汗)、、、分かった、直ぐ行く、、、というわけで続きは後ほど(笑)

-----(中断&帰宅ならぬ帰PC前w)-------
続けます(いやぁ三男に回り将棋で負け、次男には挟み将棋で初めて負けてしまいました、、とほほ)。

まずはこの曲の出だしです。
D-dur_sor_op31-3出だし.jpg
 この曲は曲集中の第「3番」ということもあって技術的には比較的容易なのですが、D音とA音が「一見普通に」使われているため、これを通常の(DA破綻タイプの)純正律で演奏しようとすると、響きの悪い箇所が幾つも現れることになります。

 例えば楽譜2段目の出だしですが、低音が「4弦開放D」⇒「5弦開放A」と進行し、メロディーの2拍目頭は「A音」のため、2拍目で低音Dの響きが残っていると「下から(A)DA」の響きが出来てしまうんですね。

 で、楽譜1段目の出だしと比較すると分かるように、ここは最初の出だし部分のいわば「変奏」なんですね。そして、出だし部分のメロディーの2拍目頭は「G音」のため、ここは2拍目で低音Dの響きが残っていても「下からAD(G)」の響きなので、それほど酷く感じないんですよ。 言い換えると、ソルは、この2段目の変奏部分で、技術的課題である「4弦開放音の消音」を、『どんなに鈍い人wでも気付くように、』わざとA音を加えたと考えられるんですよ。

 こんな感じで、この曲は、「DとAの音の干渉(悪い響き)」を発生させないための「消音」や「ノンレガート化」などが大きな課題になっていると思われます。他にも例えば、楽譜2段目右端の低音進行を見ると、「下からDA」になっていますよね。クローズアップするとここです。
0p31-3転調部分.jpg
つまり、DA破綻形音律で弾く場合、この低音D音は、「直ぐ消音」しなければならないんですよ(上記音源演奏ではプレッシャーのためここをトチってます(爆))。 「曲の『ルート音』を速攻で消音」なんて、今までの常識?では到底考えられなかったのですが、純正律の世界ではこういった事象(イベント)が当然のように起きる訳です。

(ひそひそw・・・そしてそれを「これは面白い! 攻略しがいがある」と喜んで取り組む人と、「へっ、そんな面倒なことは今更やりたくないね!」と放棄してしまう人との間では、その後の音楽人生(さらには人生そのもの)において「天と地ほどの差」がついてしまうことは、改めて書くまでもありませんよね(←って、色&強調まで付けて書いてますけど(爆)))

 ちなみにこのD和音のところから、前回のニ長調曲と同様に、Eの(第1転回)和音を使ってA調への臨時転調が行われるのですが、このD(Ⅰ)和音からE(Ⅱ)和音の変化は、違和感がなく「実に自然な感じ」がして驚かされます。和声分析してみて初めて「あ、ここはⅠ⇒Ⅱになっているのか!」と分かった次第です。

そして曲の終盤では、このように、
OP31-3後半部分.jpg
Aの低音を活躍させて、この低音Aが鳴っている間はメロディーに「D」を登場させない所なんか、正に『確信犯』以外の何者でも無いですよね。 最後は『定石』通り、「Aを使わない」D和音で終結させる訳です。

 いやぁ本当、驚きですよね、、、では次に、って今度は夕飯ですか、、、少し中断します。

 続けます。

 上記音源の演奏を楽譜と照らし合わせて聴いてみると、消音等の課題がこなせていない箇所が少なからずあるかと思います、、、、まぁ当方、本業を別に持つ単なる「一勤労愛好家」wに過ぎませんので、その辺については多くを期待しないでいただけると幸いです(汗)、、、というか、「何だこれなら俺(私)の方が上手く弾けるぞ(わよ)」と奮起していただければと思う次第であります。

 ともあれ、ノーマル純正律(DA破綻型)でも(「課題」さえこなせば)問題無く弾けてしまう「ニ長調曲」を沢山作ったソルは、それだけでも実に偉大な作曲家な訳でして、真面目な話、人類音楽史上「ノーマル純正律で弾けるニ長調曲」を最も沢山作った作曲家はソルである可能性だってある訳で(実際その可能性が高いのでは?)、それが正当に評価されていない現代音楽社会は何と言うか、「体たらく&情けない」の極みですよね本当。 

 では最後に、やはりノーマル純正律で弾くニ長調曲演奏は「一勤労愛好家w」にとってはハードルが高いので、 この曲集の第1番であるハ長調練習曲の純正律音源をUPして、今回の投稿を終えたいと思います。

 いやぁ本当、純正律の響きって最高ですよね(しみじみ)。

 それでは皆様、良い芸術の秋を!! 


nice!(0)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 4

トビ氏

koten様

私も、MTギターに持ち替えて、掲載された2曲を弾いております。ちょうど、初心者の頃に手をつけて、なんとか形に出来た思い出の曲でした。平均律ギターで弾いていたころも、「なかなか、おつな曲やな」という、まあ、一応、好印象の曲でしたが・・・。

最近、MTギターで弾き直してみたところ、「フレーズの頭に来る、長三度の音程にウットリ〜、ビックリ!!」でした。

僕のレパートリーは少ないですけど、「ソルの曲は、他よりも図抜けているな」という予感がしています。

MTギターが、作曲家の意図する“ベスト”ではないとは思いますが、“長三度の美しさ”という点では、“ベター”なのかなと・・・。

kotenさんが前に言われていた、「フレットの原初位置は、12ETのそれではなかったと断言します」という言葉を、痛感しました。正直、12ETのギターでは、「練習する気が起きない。だって、音が気持ち良くない」という気持ちです(わずか数週間で)。

いや〜しかし、私事ですが、“初級者レベル”で、今のうちに気付けて良かったです・・・。

開放弦の消音や、コードの転回など、理論のお話も参考になりました〜。ありがとうございます!色ペンでの書き込み方も、マネさせていただきます!
by トビ氏 (2013-10-06 22:10) 

koten

トビ氏さん、コメントおおきにです。( ^-^)_旦~

>長三度の音程にウットリ〜、ビックリ!!
 お気持ち分かります。私も初めてMTギターでソルの曲を弾いたときは本当、衝撃的でしたね。

>「ソルの曲は、他よりも図抜けているな」という予感
 何と言っても「ギターのベートーベン」と呼ばれたくらいの人ですからね。私も「予感」ですが、ソルの曲を分析すればするほどその凄さを実感出来るのではないかという気がしています・・・作品6なども分析を開始してますので、乞うご期待ですw。

>“長三度の美しさ”という点では、“ベター”なのかなと
 「1/4」シントニックコンマMTであれば、「長三度の美しさ」という点では、“ベター”ではなくて間違いなく「ベスト」ですよ(笑)。1/4MTはそれこそ純正長三度「至上主義」の音律ですので。

>フレットの原初位置
 冷静に考えれば12ETの位置であり得ないことは誰でも分かると思いますよ。
 そもそも12ETは「オクターブ内で使用する音階を12個に限定する」という大前提が無ければ生まれ得ない音律ですし、「音階」の歴史を調べて行けば、「最初から12音」という前提自体あり得ないんですよ。そもそも最初は音階7音の内の「シ」の音すら無かった訳ですし。いわゆる「派生音」なんて原初は当然無かった訳ですよ。

>正直、12ETのギターでは、「練習する気が起きない。だって、音が気持ち良くない」という気持ちです(わずか数週間で)。
 激共(←激しく共感w)です。それでも、(私もそうですが、)子供時代に「12ETは良い音律である」旨の教育(別名「洗脳」)を受けてしまった人は、無理してでも12ETで練習するので、「腱鞘炎」を始めとして、色々と不健康な症状が出てくるんですよ、、、これ、自分自身がそうだったから痛感していますし、そもそも私が最初にギターレッスン受けた先生も腕に「お灸」をされてましたしね、、、、。

>“初級者レベル”で、今のうちに気付けて良かった
>マネさせていただきます
・・・喜んでいただけたようで何よりです。
  総じて、私の新旧ブログって、ナカナカ「画期的」だと思いませんか?(爆)

by koten (2013-10-06 23:38) 

トビ氏

>ナカナカ「画期的」
 画期的どころか、“連載”、“出版”レベルではないでしょうか?ご家庭を持たれて、お仕事をされながら・・・、かなり“熱い”と思います。そういう意味でも、とても感銘を受けます。

>「最初から12音」という前提自体あり得ない
 なるほど〜。“デフォルト12ETありき”という発想は、音楽以外の諸事情(演奏家の利便性、楽器の製造簡素化、画一的な音楽教育普及など)でそうなったのかな?と思いますね。
by トビ氏 (2013-10-07 23:05) 

koten

再コメどうもです。折角なので表記事でレスしてみました。
http://justintonation.blog.so-net.ne.jp/2013-10-08
by koten (2013-10-08 13:00) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。